巡検のお知らせ(10月8日(月))

巡検のお知らせ(10月8日(月))

10月に兵庫地理学協会も共催する日本地理学会秋季学術大会において,以下の巡検を 企画しております。参加のご検討いただきますようよろしくお願いいたします。

テーマ:「いなみ野台地-過去,現在,未来-」

趣旨:

神戸市西部を流れる明石川 から加古川の 間に広がる「いなみ野台地」は,『播磨風土記』 や『万葉集』 にもみられ古くから知られた地であり、『枕草子』にみるようにかつては野(原野)の代表で あった。そして時代をわたる地域の開発を 経た今日,日本有数の溜池灌漑卓越地域と して知られる。

巡検で は近代化遺産・疏水百選の一つである淡河 川・山田川疏水にほぼ沿ってたどるが,水利施設(疏水・溜池) だけでなく、基底をなす「いなみ野台地」の地形,都市近郊の立地を活かした農業施設(兵庫楽 農生活センター:かんでかんで)や阪神・淡路大震災を契機に設置さ れた防災拠点(兵庫県広域防災センター)などを見 学する。また新しいまちづくりの試みとして注 目される兵庫県東播磨県民局 などが推進する「いなみ野ため池ミュージアム」の10年間の取り組みについて,その関係施設の現地見学の ほか事業推進者による説明・意見交換の 場も設定し、「いなみ野台地」の過去,現在,未来を総合的に とらえる。


集合 10月8日(月) 9時:JR西明石駅 東口改札(在来線側)  雨天決行

解散 10月8日(月) 16時:JR加古川駅

コース

JR西明石駅 (集合)-釜谷池-御坂サイフォン-兵庫県広域防災センター-兵庫楽 農生活センター(昼食)- 練部屋円筒分水工 -加古大池公園-JR加古川駅 (解散)

案 内者

南 埜猛(兵庫教育大学),田中真吾(神戸大学名誉教授),藤崎和生(兵庫地理学協会),森本眞 一(明石溜池研究会),矢嶋巌(神戸学院大学)

募集人数 40名 (最少催行人員  30名)

参加費 1500円(バス代・昼 食お弁当代・資料代を含む)

地 形図 2.5万分の1「淡河」,「三木」,「東二見」,5万分の1「神戸」,「高砂」

申込締切り 9月28日(金)(延長しました)

本巡検には,日本地理学会と兵庫地理学協会の会員以外の方も参加できます。巡検テーマに関心のある方は,是非,ご参加ください。

参加申込み・問合せ先

〒673-1494 兵庫県加東市下久米942-1 兵庫教育大学 地理学研究室  南埜 猛

TEL・FAX 0795-44-2143  e-mail:inamino2012@  @のあとに、ybb.ne.jp

なお日本地理学会のホームページアドレスは,http://www.ajg.or.jp/ajg/2012/07/20123.html
http://www.ajg.or.jp/academic.html

詳細は以下をご覧下さい。

第1班 いなみ野台地 -過去,現在,未来-

案内者 南埜猛(兵庫教育大学),田中眞吾(神戸大学名誉教授),藤崎和生(兵庫地理学協会),
森本眞一(明石溜池研究会),矢嶋巌(神戸学院大学)

キーワード:いなみ野台地,溜池,疏水,地域開発,防災・減災,まちづくり,兵庫県

趣旨 
神戸市西部を流れる明石川から加古川の間に広がる「いなみ野台地」は,『播磨風土記』や『万葉集』にもみられ古くから知られた地であり,『枕草子』にみるようにかつては野(原野)の代表であった。そして時代をわたる地域の開発を経た今日,日本有数の溜池灌漑卓越地域として知られる。
巡検では,日本の「疏水百選」の一つである淡河川・山田川疏水にほぼ沿ってたどるが,「近代化産業遺産」にも登録されている御坂サイフォンや「ため池百選」に認定された溜池群などの水利施設だけでなく,基底をなす「いなみ野台地」の地形,都市近郊の立地を活かした農業施設(兵庫楽農生活センター:かんでかんで)や阪神・淡路大震災を契機に設置された防災拠点(兵庫県広域防災センター)などを見学する。また新しいまちづくりの試みとして注目される兵庫県東播磨県民局などが推進する「いなみ野ため池ミュージアム」の10年間の取り組みについて,その関係施設の現地見学のほか事業推進者による説明・意見交換の場も設定し,「いなみ野台地」の過去,現在,未来の地域像を総合的にとらえる。

集合:10月8日(月)9時 JR西明石駅東口改札(在来線側) 雨天決行
解散:JR加古川駅16時 
コース:JR西明石駅(集合)― 釜谷池 ― 御坂サイフォン ― 兵庫県広域防災センター ― 兵庫楽農生活センター(昼食)― 練部屋円筒分水 ― 加古大池公園 ―JR加古川駅(解散)
地形図:2.5万分の1「淡河」,「三木」,「東二見」
5万分の1「神戸」,「高砂」
巡検の見どころ
1:自然・人文地理学の両領域にまたぐ巡検内容。
2:文化庁による「文化的景観を対象とした調査」(2003年)で重要地域に選択された文化的景観「稲美のため池群」を1日にわたって見学。
3:いなみ野台地の地形発達史を体感できる巡検ルートと解説。
4:いなみ野ため池ミュージアム・兵庫楽農生活センターなどそれぞれ事業推進者による説明と意見交換の場を設定。
5:通常は閉鎖されている御坂サイフォンが設置されている南側斜面を特別に開放。直径約1mのサイフォン管を間近に見るとともに,長さ700m,高さ50mを超える巨大な逆サイフォン工法(伏越)を体感。

いなみ野台地の地形発達史(いなみ野台地)
 いなみ野台地(いなみの台地,印南野台地,明美台地などとも表記)は,東は明石川,西は加古川,北は美嚢川,南は播磨灘に限られた台地で東西,南北ともに約16㎞にわたっている。北東部の雌岡山付近(標高約120m)から加古川左岸(標高約20m)まで南西方向に高度を減じながら広がる地形は扇のようで,かつては隆起扇状地とされたこともあった。田中(1989)は,16段以上の小さな段丘面の集合体,段丘地形群からなることを解明した。すなわち,これら多段の段丘面の形成は第四紀以降の土地の傾動隆起と気候変化にともなう海面変動によるものであること,形成時期も火山灰による年代測定の分析結果から,ミランコヴィッチの天文学説と対応することを明らかにした。
 巡検では,いなみ野台地を縦断し,多段の段丘面を観察するとともに,いなみ野台地の景観を特色づける溜池と段丘地形との関連について考察する。

溜池と疏水(御坂サイフォン・練部屋円筒分水・加古大池)
 兵庫県は溜池王国である。日本全国には約21万の溜池がある。その22.6%にあたる4万7596は兵庫県にあり,2位の広島県(1万910)と比べても2倍以上の溜池が分布する(農林水産省,2002)。
いなみ野台地の溜池の数はそれほど多くはない。台地の中央に位置する稲美町(面積:34.96㎞2)を例にすれば,その数は89である。しかし溜池の満水面積の合計は,町域の10.7%を占め,溜池密度(溜池満水面積/田面積)は37.5%(2010年)である。地形図をみると,いなみ野台地上の溜池の一つ一つは満水面積が大きく,そして世界的にみても特異な,溜池が織りなす特徴的な景観を読み取ることができる。
岡の大池(現,天満大池)が675年に築造されたとの記録があるなど,いなみ野台地における溜池の築造は古代にまでさかのぼる。しながら,近世の新田開発がなされるまで,いなみ野台地の大部分は原野として残されていた。
新田開発では,土木技術の発展とともに非灌漑期の河川水の利用という発想の転換が開発の鍵となった。その発想を有効にする装置が溜池である。すなわち,水を使うのは灌漑期であり,溜池によって非灌漑期に取水した水をストックし,活用するのである。近世においては,台地上の中小河川を水源とするこの河川と溜池を結びつけた疏水の開発が多く実施された。
近代には,台地の外を流れる淡河川や山田川を水源とする疏水の開発が実施された。その一つである淡河川疏水の実現においては,精緻な測量技術や軟鋼管など近代技術の導入や輸入が重要な役割を果たしている。また山田川疏水では60を超える溜池が新設されている。
そして戦後の国営東播用水事業では,加古川上流の篠山川や東条川の水をいなみ野台地に導水する一大水利ネットワークを形成し,この地域の人々の生活や産業を支えている。
巡検では,兵庫県下最大の溜池であり近世の新田開発期に築造された加古大池,淡河川・山田川疏水の象徴的施設である御坂サイフォンや練部屋分水工,さらには国営東播用水の基幹施設である呑吐ダムなどを現地見学するとともに,今日の景観を特徴づけているいなみ野台地での過去の水利開発の歴史を考察する。

防災・減災への取り組み(兵庫県広域防災センター)
 兵庫県では阪神・淡路大震災を教訓に,救助物資等の備蓄や救急活動要員の集結・出動と県内外からの救援物資の集積・配送の拠点となる広域防災拠点を,県下各地に整備している。
 兵庫県広域防災センターは,それら広域防災拠点ネットワークの中核として全県域をカバーする総合的な機能とともに,神戸地域・東播磨地域・阪神北地域及び北播磨地域の広域防災拠点の機能の両方をあわせ持った施設として設置された。
 災害時には,県の広域防災拠点と各市町の地域防災拠点が連携し,迅速かつ効果的な応急対策が実施される。
平常時には,県民一人ひとりの防災意識を高めるために,一般の人を対象とした体験型の学習や訓練のほか,自主防災組織などの防災リーダーの人材育成講座なども開催している。また,高度かつ専門的な教育訓練施設・設備を備えた兵庫県消防学校において,複雑・多様化する災害に対応できる消防職員や消防団員の養成や大規模な災害発生時に活動する緊急消防援助隊の訓練も行っている。
 さらには,2005年4月より,E-ディフェンスと呼ばれる実物大三次元震動破壊実験施設(独立行政法人 防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター)が併設され,「大地震から構造物被害軽減に如何に貢献するか」を目指し,研究に取り組んでいる。
巡検では,E-ディフェンスのほか,訓練のために設置されたがれき現場・阪急電車車両,ヘリポートなどをバスの車窓から見学する。

都市化と産業開発(兵庫楽農生活センター)
 巡検のコースのうち,とくに西神地域(神戸市西区),志染地域(三木市南東部)にかけては,第二次世界大戦後に,大都市近郊地域として,住宅や工業団地が開発されてきた。また,自然環境を活かした開発も行なわれ,現在でも比較的農業が盛んな地域である。
 神戸市は,旧明石郡から1947年に編入された西神地域においてニュータウンを開発する構想を打ち出し,西神ニュータウンが 1972年に本格着工し建設された。丘陵上に,住宅,工業,流通業務,研究教育を中心とする地区がそれぞれ設けられ,輸送機関として市営地下鉄が延伸された。
 また,1960年代後半以降,三木市の神戸電鉄粟生線沿線では,神戸市のベッドタウンとして大規模な住宅開発が行なわれてきた。
 自然環境を活かした開発としては,1983年に神戸市によりワイン工場が建設され,その周辺が農業公園として整備された。原料のブドウは,神戸市西区や北区で生産されてきた。当初は需要にワインの生産が追いつかなかったが,現在は厳しい経営状況にある。2006年には兵庫県により,農業振興と地産地消の推進を目的とする兵庫楽農生活センターが,兵庫県農業試験場跡に建設された。兵庫みどり公社,食品スーパー,JAなどにより運営され,農産物直売所,自然食レストラン,果樹園・水田があり,農業体験もできる。
 丘陵や台地の谷間にある水田では,大粒の酒造好適米である山田錦の生産が行なわれて,山田錦をPRするJAや酒造会社の幟を目にすることができる。
 巡検では,バスの車窓よりニュータウンや工業団地の都市景観と自然環境を活かした農業が展開する農村景観を考察するとともに,兵庫楽農生活センターでは,同センター職員の説明ならびに,昼食にはセンター内にある自然食レストランの弁当を賞味する。

新しいまちづくりへの取り組み(釜谷池・加古大池公園)
 「いなみ野ため池ミュージアム」は,東播磨地域(明石市・加古川市・高砂市・稲美町・播磨町)で展開する田園空間型のミュージアムである。2001年に策定された「東播磨地域ビジョン」を実現するための行動計画の一つとして“ため池群と水路網”をテーマとする新たな地域づくり「いなみ野ため池ミュージアム」(当初は「東播磨ウォーターフロントミュージアム」)の取り組みが開始され,その取り組みは今年で10年を迎えている。この間,講座「いなみ野ため池学」やキュレーター・インストラクター制度などの人づくり,いなみ野ため池博覧会やクリーンキャンペーンなどの魅力づくり,いなみ野パールプロジェクトや「循環する水の路」展開プロジェクトなどの企画開発,さらにパンフレットやグッズの作成などの普及啓発といった様々な取り組みを行っている。
「いなみ野ため池ミュージアム」を支える体制の一つが溜池単位に組織される「ため池協議会」である。「ため池協議会」は,農家などの溜池管理者だけでなく,地域の自治会や地元企業など非農家を含めた多様なメンバーで構成される組織である。2012年3月の時点で,58の「ため池協議会」が設置され,活動を行っている。
巡検では,「ため池協議会」の実践例として,「釜谷池協議会」を取り上げ現地でその活動を紹介するほか,加古大池公園の管理棟交流室で「いなみ野ため池ミュージアム」の10年の活動や組織についての説明を受け,新しいまちづくりのあり方について意見交換を行う。


文献
いなみ野ため池ミュージアム運営協議会ほか編 2010.『いなみ野台地を潤す“水の路”~淡河川・山田川疏水記録誌』
いなみ野ため池ミュージアム運営協議会編 2012.『いなみ野ため池ミュージアム-10年の歩みー』
新修神戸市史編集委員会編 1990. 『新修神戸市史 産業経済編Ⅰ第一次産業』.
新修神戸市史編集委員会編 2005. 『新修神戸市史 行政編Ⅲ都市の整備』.
田中眞吾 1989.「いなみの台地」.加古川市史編さん専門委員会編『加古川市史 第1巻』.
農林水産省(2002):『ため池台帳 -長期要防災事業量調査』
兵庫県三木市編 1970. 『三木市史』.

2012-08-21 15:36 : 集会・フィールドワーク :
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Author:兵庫地理
1947年創立。「兵庫地理」を毎年発行。兵庫県下の地理学の研究・教育に関する協会。
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